読書大好き♪
パリジャンです。
「京都府警 あやかし課の事件簿」シリーズの第一巻を読みました。
主人公の古賀 大(こが まさる)は京都府警あやかし課に入隊したての20歳です。
「まさる」という名前ですが、小柄な女の子。
ある出来事から”魔除けの力”を授かった彼女が京都の街で起きる
数々の”あやかし”が関連した事件に立ちむかう現代ファンタジー。
どこまでもまっすぐな気持ちを持っている主人公の大。
事件を通して成長していく過程とちょっぴりのロマンス要素が魅力です。
それでは作品の感想へ、れっつごー☆
それぞれのお話の結末は載せていません。
あらすじのみを紹介しているので気になる方は是非、読んでみてね。
初版発行 | 2019年1月18日 |
著者 | 天花寺さやか |
装画 | ショウイチ |
出版社 | PHP文芸文庫 |
記事内の画像・文章には関連商品を使用させていただいております。
この作品の好きなところ
あやかしをテーマにした作品は数あれど、この作品が新鮮だと思ったのは「あやかし=絶対悪」として描いてはいないところ。
ときにあやかしからの相談を受けながら、ときに神仏からの助けを受けながら。
ひとつひとつの事件に向き合う、若き隊員たちの姿勢はまぶしいものがあります。
現実の捜査令状のように「交戦退治許可状」「御祓捜索差押許可状」といった令状が必要だったりと設定も楽しいですね。
もしかしたら、もしかするかもね。と想像させてくれるファンタジーは大好き!
作品の内容
物語のはじまり
主人公の古賀 大(こが まさる)は20歳になったばかり。
“まさる”という勇ましい名前ではありますが、小柄な女性です。
彼女が18歳の送り火の夜。あやかしに襲われたところ、日吉大社の”魔除けの力”を授かったことをきっかけに霊力を身に着けました。
彼女が暮らす京都の街は現代でも「あやかし」たちが生きています。
人間たちと同様に静かに暮らすものもいれば、平和を脅かすものもいる。
まさるの所属した「京都府警あやかし課」はあやかし関連の事件専門の部署。
霊力を持たない人には見ることすらもできない異形の存在であるあやかしに
立ちむかう大の物語のはじまりです。
第一話 雷のエースと魔除けの子
「君は、魔除けの子になったんやで」。
この言葉とともに主人公の女の子・古賀大(こが まさる)は京都御所は日吉大社の神の使い「神猿(まさる)」から魔除けの力を授かります。
舞台となる現代の京都府警には「人外特別警戒隊(通称 あやかし課)」という部署があります。
古い時代から人々とともに生きてきたあやかし。そのあやかしが関係する事件専門部隊の一員として就職した大は八坂神社氏子事務所「喫茶ちとせ」へ配属されました。
彼女の魔除けの力とは、身の丈六尺ほどの武芸に長けた美丈夫(作中では”まさる”表記)に変身するというもの。
しかし大は変身している間は力の制御ができず、それを心配していました。
じぶんでコントロールできるまでは黙っていよう。と思っていたこの力もある事件がきっかけで喫茶ちとせの面々へバレてしまいます。
突飛な話に驚きつつも、それでも受け入れてくれた同僚たちの言葉に応えるべく気持ちを新たに職務に就く大なのでした。
そんなある日、大にとってはじめての事件が舞い込んできます。
「鬼がトラブルを起こしている」との通報をもとに駆けつけた一行。そこには先日、補導したばかりの鬼と、言い争っている若い女性。
いったい2人になにがあったのか? はじめての事件の行方はいかに。
どんな人の人生にもかならず”壁”は訪れます。
それをどのように越えるのか、また それがじぶんの大切な人の前に現れたならどのような言葉をかけるのか。
たぶん正解はないんだけれど、もしもぼくがその境遇になったらどうするんだろう。
何かにくじけそうな時に支えてくれる相手がいること。
普段は気にもとめないけど、とっても素晴らしいことだね!
第二話 先斗町・命盛寺の伝説
今回のお話の舞台は京都市中央区の「命盛寺(めいせいじ)」。
鴨川と花街で有名な先斗町にあります。
ある日、大たちの職場「喫茶ちとせ」へ命盛寺から「鎮魂会」への招待状が届いたところからはじまります。
鎮魂会は命盛寺の僧侶と大たちの八坂神社氏子事務所・お隣の伏見稲荷大社氏子事務所が毎年、
納涼床の時期に合同で開催する食事会です。
単なる食事会と思っている大でしたが、喫茶ちとせの面々はこの会への参加を一様に渋っている様子。
それは”食事会の真の意味”を知っているからでした。
さて、大がはじめて参加するこの鎮魂会、そこには何が待っているのでしょうか?
鎮魂会は命盛寺の建立に由来するイベントです。
“飽食の時代”とも言われる現代日本。
人々が忘れつつある食への感謝の心の大切さが
このお話では描かれています。
頼もしい先輩、坂本塔太郎。
あやかし退治のエースとしてだけでなく、ひとりの人間としての彼の優しさが光るお話です、顔も中身もイケメン!
第三話 華やかお転婆、祇園が狙う
今回のお話の舞台は東山区祇園の「ぎおん 寿美の(すみの)」。
花見小路に面している老舗の料亭です。
事件は薮内兼光(やぶうちかねみつ)が喫茶ちとせへ相談にやってきたところからはじまります。
いなくなってしまった娘が夢に出てきて「助けて」と言っていた。どうにか救ってほしいというのが彼の依頼です。
化け物たちに攫われた。という娘の言葉をもとに警察ではなくあやかし課へやってきたのだとか。
手分けして事件の捜査を進める大たち。
辰巳大明神の助けを借りて、事件のカギは料亭『寿美の』で行われる”競り”にあるのではないかと行きつきます。
その会場に参加している古美術商のうちのひとつである”睡蓮堂”。
鳴き物(=人や獣を閉じ込めた美術品)を扱っている彼らを逮捕するべく、あやかし課一同が潜入捜査に乗り出すのでした。
薮内父娘は人に変化してひっそりと暮らしている鬼の親子。
人と共存するあやかしもいれば、悪さをするあやかしもいる。
それは人に置き換えても同じなのかもしれないね。
一同に手がかりをくれた辰巳大明神は南東を守る神。
“祇園のお稲荷さん”と親しまれている彼は、伝承にもあるようにタヌキに化けることができます。
変化しては街行くお姉さんたちに可愛いと撫でてもらうのが好きという、とっても愛らしい神様です♪
第四話 斎王代の受難
京都三大祭のひとつに数えられる「葵祭」。
その祭の代名詞的存在に”斎王代”というものがあります。
加茂社へ仕える皇女「斎王」の代理が斎王代。
斎王代に選ばれるのは”家柄と財力”がある証拠。名誉であると同時に、持たぬ者からの負の感情も持たれるものでした。
事件は一昨年、斎王に選ばれた娘をもつ八嶋佳代子が相談に来たことからはじまります。
娘の美咲が体調不良に見舞われ、どうやら”あやかし”の仕業らしいという医師の助言をもとにやってきたのでした。
斎王代に選ばれた娘はちょっとした不幸に見舞われるジンクスがあります。
けれどもそれはおなかを壊したりといった軽いものばかり。
なぜ美咲だけ、ここまで大きなトラブルに巻き込まれたのか?
そこには”人の心の闇”が隠れていました。
じぶんと人と。境遇を比べたり、羨んだり。
その気持ちはきっと誰しもが持っているもので、
どう向き合うべきかを考えさせられるお話です。
大は日々の鍛錬で、魔除けの力を制御することに自信をつけていきます。
しかし今回はその自信が災いして、塔太郎がケガをすることに。
心を痛めるのは同僚への心配なのか、それとも…。甘~い!!
好きな台詞・シーン
『それで、最近こう思うんです。ひょっとしたらこれ、スランプじゃなくて、私は井の中の蛙なのかなぁって。』
第一話 雷のエースと魔除けの子
『また君の詩が読みたいんやもん。巧みさとかそういうのんより、君の詩の方がいいんやもん』
自信をなくした真穂子と応援する芝の台詞
詩人になるのが夢で大学へ進学したものの、サークル仲間とじぶんを比べすっかり詩を書く自信をなくしてしまった真穂子。
彼女はじぶんのことを「十で神童、十五で才子、二十歳すぎれば只の人」の言葉になぞらえて才能がないのだと言います。
そんな彼女にかけた芝のまっすぐな言葉はとても優しい。
人と比べるという行為の先にはおわりはないし、幸せもない。
人が生きることの確信をつくような一言ですね。
芝くんはかつての盗みの罪の懲罰で寺で働かされている鬼。
学問に疎い彼の心にも届いた真穂子ちゃんの詩はどんな内容なんだろう。
いろいろ想像が膨らみます。
『りょうかーい、一発芸やります! …待ち合わせ場所!』
第二話 先斗町・命盛寺の伝説 鎮魂会での塔太郎の一発芸の台詞
命盛寺の最寄り駅である「三条京阪」。
そこには”土下座像”と呼ばれる高山彦九郎(たかやまひこくろう)の像があります。
あやかしに関する仕事をしているだけあって、異形のものへ真摯な想いを持っている八坂神社氏子事務所・伏見稲荷大社氏子事務所の面々。
ですが肝心の鎮魂会はある意味、とっっっても苦しい内容の食事会でした。
おかしなテンションで大学生のような”ハイ”になってしまう面々。
仲間たちにおだてられたとはいえ、名高い武士である彦九郎像を力いっぱいネタにする塔太郎の勢いに思わず笑ってしまいました(笑)
「コラァ、坂本! 何のつもりじゃあ!」と駅前から銅像の刀を命盛寺にぶん投げてブチギレている彦九郎像。
名高い存在なのに人間っぽいのがとても面白いです。
この話にはほかにも薬師如来(やくしにょらい)や少彦名命(すくなひこなのみこと)も登場します。
楽しみながら伝承も学べる、いい作品だぁ。。
『当ったり前やろ!何が嬉しくて、男のペットにならなあかんねん!』
第三話 華やかなお転婆、祇園が狙う 早く街に出たい辰巳大明神の台詞
辰巳大明神には「巽橋に住んでいた悪戯タヌキに困った人々が狸を祀る祠を立てた」という伝承が残されています。
この伝承に則っているのか、作中の辰巳大明神様もとってもチャーミング。
タヌキの姿に化け、寿美のに急ぐ…かと思いきや、そこは祇園に根付いた芸舞妓の神。
いつも辰巳神社へ来るたびに塔太郎に「街へ連れてけー!!」と騒いでは街中で人とじゃれ合うのが好きというなんとも遊び好きな神様。
連れ出す役目を大にバトンタッチした辰巳大明神の塔太郎への台詞は
“神様の威厳とはいったい…(笑)”となってしまうような面白おかしいものでした。
実際の伝承に残っている、ぼくたちの現実世界の辰巳大明神ももしかしたらこんな性格なのかな?
遊び好きな神様がいたなら、現代の娯楽にあふれる世界はどのように見えるのだろうね。
『もうほんまに、俺の事なんか気にすんな!多少の失敗なんかにめげんと、どんどん立ち向かってったらええねんで』
第四話 斎王代の受難
ケガをさせてしまったことを気にする大への塔太郎の台詞
猿ヶ辻と塔太郎。2人に付き合ってもらいながらの特訓の日々の中で、大は自信の魔除けの力を少しずつ磨いていきます。
力がつけば、おのずと自信も湧いてくるもの。
しかし、その自信は驕りとなって大はある失敗をしてしまいます。
ミスをしたこと、そのせいで塔太郎にケガをさせてしまったこと。
じぶんを責める大にかけた塔太郎の言葉は、先輩として・人間として”イケメン”そのものでした。
なんだこいつ…、天然でこの言動はカッコよすぎるだろぅ。。
言葉ひとつで人の心は変えられる。
心掛けひとつで未来を変えられる。
人間の強さは目に見えないものの中にあって。
けれどそれはきっと、ずっと。いつの時代も。
変わらずそこにあるものなんだろうね。
まとめ
「京都府警 あやかし課の事件簿」第一巻のあらすじ紹介と感想をまとめでした。
小説投稿サイト「エブリスタ」で投稿されていた経歴のある作品です。(旧題『京都しんぶつ幻想記』)。
ファンタジーあり バトルあり ちょっとしたロマンスあり。
文体もライトノベルしかりとしているので非常に読みやすい内容です。
正直言って、第一話を読んだ段階では「う~ん、、」と思っていました。
ですが読み始めた方、是非とも第二話まで読んでください!!
きっとぼくがおすすめしている気持ちが伝わると思います。
現代×ファンタジーであやかしもの。ワクワクと胸きゅんが詰まっている作品です。
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